痛めた記憶がないのに腰が痛い。これってギックリ腰?
2026.08.28
こんにちは。
世田谷区奥沢・大田区田園調布・目黒区自由が丘の鍼灸マッサージ治療院THE DiMEです。
今回は腰痛について。
「重いものを持ったわけでもない」
「運動中に痛めたわけでもない」
「特に思い当たる原因がないのに腰が痛い」
腰痛で来院される方の中には、このようなケースもあります。
今回の症例は、4~5日前から腰の痛みに悩まされていた男性のお話です。
もともと運動をたくさんされていて、姿勢も比較的良い方。
ところが最近、
「腰が丸くなってきた気がする」
「寝具を変えたせいかもしれない」
「朝起きると腰が伸びない」
「でも、しばらくすると伸びてくる」
とのことでした。
「腰が伸びない」から、腰を伸ばせばいい?
今回、最初に気になったのが「腰が伸びない」という訴えでした。
「腰を伸ばさなければ」と身体を使っている可能性があります。
しかし、だからといって「腰を伸ばす筋肉が硬い」とは限りません。
痛みや身体の動きの制限によって、結果的に腰を伸ばしにくい動作になっていることもあります。
そこで、腰だけではなく股関節の動きも確認。
椅子に座った状態で少し腰を丸め、左右の脚を片方ずつ持ち上げてもらうと、右側に違和感が出ました。
ここから、大腰筋を含めた股関節周囲の機能が腰の動きに関係している可能性を考えました。

トーマステストで確認
大腰筋など股関節周囲の状態を確認するため、トーマステストという検査を実施。
結果は右側が陽性でした。
もちろん、トーマステストが陽性だからといって「腰痛の原因は大腰筋」と決めつけることはできませんが、
腰・骨盤・股関節の動きや筋肉の緊張など、身体全体を見ながら考えていく必要があります。
まずは痛みを落ち着かせる
今回は痛みがあることで身体全体に力が入りやすい状態でした。
そこで、まずトリガーポイント鍼療法(痛みに過敏な状態になっている筋筋膜に針を打ち鎮痛を促すはりの方法)によって痛みを落ち着かせ、身体を動かしやすい状態をつくることに。
鍼の後に再度動いてもらうと、かなり動きやすくなりました。
(私の主観ですが、はりを打った感じおそらく大腰筋が痛みや緊張の原因の大半を占めていたのではと思っています)
ここから、さらにマッサージ、筋膜リリースなどのアプローチを行い、腰だけではなく身体全体のバランスを整えていきます。
そして、最後に行ったのが呼吸エクササイズです。
腰痛と呼吸。一見関係なさそうですが…
今回、呼吸エクササイズ後の身体の変化には、ご本人もかなり驚かれていました。
以前のブログでも紹介していますが、腰痛や姿勢を考えるうえで、呼吸は重要な要素の一つです。
ポイントになるのがIAP(腹腔内圧)。
IAPとは、お腹の中に生じる圧力のこと。
横隔膜、腹筋群、骨盤底筋などが協調して働くことで、身体の内側から体幹を支える力につながります。
余談ですが、呼吸では横隔膜だけでなく、舌骨上筋群・横隔膜・骨盤底筋など、身体の上下方向にある組織の連動も重要です。
前側を閉じて、後ろ側へ呼吸を広げる
今回行ったのは、身体の前側を閉じ、後ろ側へ空気を送って背中を広げる呼吸です。
特に意識したいのが、背中側の胸郭です。
背骨はまっすぐな棒ではなく、胸椎には本来、後方への湾曲があります。
しかし、反りが強い方では胸郭が前上方へ開いた状態(リブフレア)になり、背中側が広がりにくくなっていることがあります。
その状態で「胸を張る」「腰を伸ばす」とすると、さらに腰を反らせる方向へ身体を使ってしまうこともありますので注意が必要。
だからこそ、まずは前側を閉じる。
そのうえで、背中側(後縦隔)方向へ胸郭が広がるように呼吸していきます。
今回は2つの方法を処方しました。
先ずは、ファーストポジション
最初は正座に近い姿勢から上半身を前に倒し、肘を膝より前に置いて、手のひらを床につけます。
腰を反らせず、肋骨が前へ開きすぎないようにします。
背中を天井へ押し上げるようにして、背中全体を丸くするイメージです。
この姿勢で身体の前側を閉じたまま息を吸い、後ろ側へ空気を送って背中を広げます。
吸った後は姿勢を保ちながら、ゆっくり息を吐きます。
次の呼吸では、さらに背中側へ広げるように吸い、またゆっくり吐きます。
イメージは、背中に高い山をつくっていく感覚。
腰を無理に丸めるのではなく、呼吸によって背中側の胸郭を広げていきます。
次に、ベアーポジション
ファーストポジションで呼吸の感覚をつかんだら、次は四つ這いから膝を浮かせるベアーポジションへ。
肩の真下に手、股関節の真下に膝を置き、膝を床から少し浮かせます。
ここでも腰を反らせず、背中を天井へ押し上げるようにして、前側を閉じた姿勢を保ちます。
前側を閉じたまま息を吸い、後ろ側へ呼吸を広げる。
そして、姿勢を保ちながらゆっくり吐く。
呼吸を重ねるごとに、背中に高い山をつくっていくイメージです。
(※通常は、キャットポジションという、膝を付けた状態で行ってもらうことが多いです)
「腰を伸ばす」だけが正解ではない
今回のケースでは、腰そのものだけを見るのではなく、
股関節の動き
大腰筋を含めた筋肉の状態
身体全体の緊張
姿勢
呼吸
IAPを含めた体幹の使い方
などを確認しました。
その結果、施術後には「腰が伸びない」という感覚もかなり軽減し、ほぼ問題なく動ける状態まで変化しました。
特に反りが強い方には、このような呼吸エクササイズを一度試していただきたいと思います。
腰痛だから腰を揉む。
姿勢が悪いから背筋を伸ばす。
それだけではなく、身体がどのように呼吸し、どのように圧をつくり、どのように姿勢をコントロールしているのか。
THE DiMEでは、痛い場所だけを見るのではなく、身体全体の動きから腰痛を考えています。
「原因が思い当たらないのに腰が痛い」
「朝起きると腰が伸びにくい」
「腰痛を繰り返している」
「腰を伸ばそうとしても、なかなか楽にならない」
そんな方は、一度ご自身の身体の使い方を見直してみてはいかがでしょうか。
《この記事の監修者》
小井手 智啓(こいで ともひろ)
はり・きゅう・マッサージ治療院 THE DiME 院長
学生時代より鍼灸接骨院や整形外科にてスポーツ外傷の鑑別・施術を学ぶ。国家資格取得後は病院勤務を経て、トリガーポイント専門の鍼灸院にて5年間臨床経験を積む。2013年世田谷区奥沢に「はり・きゅう・マッサージ治療院 THE DiME」を開業。
2016年には朝日新聞出版より『さする&伸ばすで痛みを解消 筋膜ストレッチ』を監修。当時主流だったフォームローラーなどで患部に強い圧をかける手法とは一線を画し、優しく触れる・伸ばす(ズラす)アプローチによる独自の筋膜リリースを発信。
2023年には院内にトレーニングルームを併設し、運動療法を本格的に導入。一般の患者様からトップアスリートまで幅広く動きの改善をサポートしている。院内での施術の他、後進の育成や講師活動にも精力的に取り組む。
世田谷区奥沢・大田区田園調布・目黒区自由が丘の鍼灸マッサージ治療院THE DiMEです。
今回は腰痛について。
「重いものを持ったわけでもない」
「運動中に痛めたわけでもない」
「特に思い当たる原因がないのに腰が痛い」
腰痛で来院される方の中には、このようなケースもあります。
今回の症例は、4~5日前から腰の痛みに悩まされていた男性のお話です。
もともと運動をたくさんされていて、姿勢も比較的良い方。
ところが最近、
「腰が丸くなってきた気がする」
「寝具を変えたせいかもしれない」
「朝起きると腰が伸びない」
「でも、しばらくすると伸びてくる」
とのことでした。
「腰が伸びない」から、腰を伸ばせばいい?
今回、最初に気になったのが「腰が伸びない」という訴えでした。
「腰を伸ばさなければ」と身体を使っている可能性があります。
しかし、だからといって「腰を伸ばす筋肉が硬い」とは限りません。
痛みや身体の動きの制限によって、結果的に腰を伸ばしにくい動作になっていることもあります。
そこで、腰だけではなく股関節の動きも確認。
椅子に座った状態で少し腰を丸め、左右の脚を片方ずつ持ち上げてもらうと、右側に違和感が出ました。
ここから、大腰筋を含めた股関節周囲の機能が腰の動きに関係している可能性を考えました。

トーマステストで確認
大腰筋など股関節周囲の状態を確認するため、トーマステストという検査を実施。
結果は右側が陽性でした。
もちろん、トーマステストが陽性だからといって「腰痛の原因は大腰筋」と決めつけることはできませんが、
腰・骨盤・股関節の動きや筋肉の緊張など、身体全体を見ながら考えていく必要があります。
まずは痛みを落ち着かせる
今回は痛みがあることで身体全体に力が入りやすい状態でした。
そこで、まずトリガーポイント鍼療法(痛みに過敏な状態になっている筋筋膜に針を打ち鎮痛を促すはりの方法)によって痛みを落ち着かせ、身体を動かしやすい状態をつくることに。
鍼の後に再度動いてもらうと、かなり動きやすくなりました。
(私の主観ですが、はりを打った感じおそらく大腰筋が痛みや緊張の原因の大半を占めていたのではと思っています)
ここから、さらにマッサージ、筋膜リリースなどのアプローチを行い、腰だけではなく身体全体のバランスを整えていきます。
そして、最後に行ったのが呼吸エクササイズです。
腰痛と呼吸。一見関係なさそうですが…
今回、呼吸エクササイズ後の身体の変化には、ご本人もかなり驚かれていました。
以前のブログでも紹介していますが、腰痛や姿勢を考えるうえで、呼吸は重要な要素の一つです。
ポイントになるのがIAP(腹腔内圧)。
IAPとは、お腹の中に生じる圧力のこと。
横隔膜、腹筋群、骨盤底筋などが協調して働くことで、身体の内側から体幹を支える力につながります。
余談ですが、呼吸では横隔膜だけでなく、舌骨上筋群・横隔膜・骨盤底筋など、身体の上下方向にある組織の連動も重要です。
前側を閉じて、後ろ側へ呼吸を広げる
今回行ったのは、身体の前側を閉じ、後ろ側へ空気を送って背中を広げる呼吸です。
特に意識したいのが、背中側の胸郭です。
背骨はまっすぐな棒ではなく、胸椎には本来、後方への湾曲があります。
しかし、反りが強い方では胸郭が前上方へ開いた状態(リブフレア)になり、背中側が広がりにくくなっていることがあります。
その状態で「胸を張る」「腰を伸ばす」とすると、さらに腰を反らせる方向へ身体を使ってしまうこともありますので注意が必要。
だからこそ、まずは前側を閉じる。
そのうえで、背中側(後縦隔)方向へ胸郭が広がるように呼吸していきます。
今回は2つの方法を処方しました。
先ずは、ファーストポジション
最初は正座に近い姿勢から上半身を前に倒し、肘を膝より前に置いて、手のひらを床につけます。
腰を反らせず、肋骨が前へ開きすぎないようにします。
背中を天井へ押し上げるようにして、背中全体を丸くするイメージです。
この姿勢で身体の前側を閉じたまま息を吸い、後ろ側へ空気を送って背中を広げます。
吸った後は姿勢を保ちながら、ゆっくり息を吐きます。
次の呼吸では、さらに背中側へ広げるように吸い、またゆっくり吐きます。
イメージは、背中に高い山をつくっていく感覚。
腰を無理に丸めるのではなく、呼吸によって背中側の胸郭を広げていきます。
次に、ベアーポジション
ファーストポジションで呼吸の感覚をつかんだら、次は四つ這いから膝を浮かせるベアーポジションへ。
肩の真下に手、股関節の真下に膝を置き、膝を床から少し浮かせます。
ここでも腰を反らせず、背中を天井へ押し上げるようにして、前側を閉じた姿勢を保ちます。
前側を閉じたまま息を吸い、後ろ側へ呼吸を広げる。
そして、姿勢を保ちながらゆっくり吐く。
呼吸を重ねるごとに、背中に高い山をつくっていくイメージです。
(※通常は、キャットポジションという、膝を付けた状態で行ってもらうことが多いです)
「腰を伸ばす」だけが正解ではない
今回のケースでは、腰そのものだけを見るのではなく、
股関節の動き
大腰筋を含めた筋肉の状態
身体全体の緊張
姿勢
呼吸
IAPを含めた体幹の使い方
などを確認しました。
その結果、施術後には「腰が伸びない」という感覚もかなり軽減し、ほぼ問題なく動ける状態まで変化しました。
特に反りが強い方には、このような呼吸エクササイズを一度試していただきたいと思います。
腰痛だから腰を揉む。
姿勢が悪いから背筋を伸ばす。
それだけではなく、身体がどのように呼吸し、どのように圧をつくり、どのように姿勢をコントロールしているのか。
THE DiMEでは、痛い場所だけを見るのではなく、身体全体の動きから腰痛を考えています。
「原因が思い当たらないのに腰が痛い」
「朝起きると腰が伸びにくい」
「腰痛を繰り返している」
「腰を伸ばそうとしても、なかなか楽にならない」
そんな方は、一度ご自身の身体の使い方を見直してみてはいかがでしょうか。
《この記事の監修者》
小井手 智啓(こいで ともひろ)
はり・きゅう・マッサージ治療院 THE DiME 院長
学生時代より鍼灸接骨院や整形外科にてスポーツ外傷の鑑別・施術を学ぶ。国家資格取得後は病院勤務を経て、トリガーポイント専門の鍼灸院にて5年間臨床経験を積む。2013年世田谷区奥沢に「はり・きゅう・マッサージ治療院 THE DiME」を開業。
2016年には朝日新聞出版より『さする&伸ばすで痛みを解消 筋膜ストレッチ』を監修。当時主流だったフォームローラーなどで患部に強い圧をかける手法とは一線を画し、優しく触れる・伸ばす(ズラす)アプローチによる独自の筋膜リリースを発信。
2023年には院内にトレーニングルームを併設し、運動療法を本格的に導入。一般の患者様からトップアスリートまで幅広く動きの改善をサポートしている。院内での施術の他、後進の育成や講師活動にも精力的に取り組む。