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歩くと人生が変わる?『歩く マジで人生が変わる習慣』を読んで考えた、脳と身体の深い関係

2026.10.15

こんにちは。

世田谷区奥沢・大田区田園調布・目黒区自由が丘のはり・きゅう・マッサージ治療院THE DiMEです。

私は、月に1冊本を読むようにしているのですが、その中の1冊をご紹介したいと思います。

池田光史さんの著書『歩く マジで人生が変わる習慣』です。




皆さんは、普段どのくらい歩いていますか?

健康のためにウォーキングをしている方もいれば、通勤や買い物など、移動手段として歩いている方もいると思います。

「歩くことが健康に良い」というのは、よく知られた話。

しかし、本書を読んで感じたのは、歩くことの価値は、単に運動不足を解消したり、体力を維持したりすることだけではない、ということでした。

脳の働き、創造性、ストレス、足の構造、靴選び、そして私たちが暮らす街の環境まで。

歩くという日常的な行為を、さまざまな角度から掘り下げています。

機能神経学や身体の動きを日々考えている私にとっても、非常に興味深く、改めて考えさせられる一冊でした。

今回は、本書の内容を振り返りながら、私自身の感想も交えてご紹介します。



■ ジョブズもザッカーバーグも歩いていた

本書で印象的だったエピソードのひとつが、スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグのウォーキングミーティングです。

Appleの共同創業者スティーブ・ジョブズは、歩きながらミーティングを行うことで知られていました。

また、Facebookを創業したマーク・ザッカーバーグも、歩きながら会議をする姿が紹介されています。

さらに興味深いのが、Facebookを運営するMeta社の本社には、自然を感じながら歩ける屋上空間が存在するのです。

そこでは、歩きながら話し合うというスタイルも取り入れられています。

とてもユニークですよね。

それには、理由があるのです!

なぜ、忙しい経営者たちが、わざわざ歩きながらミーティングをするのでしょうか。

その理由のひとつが、歩行と創造性の関係です。

机に向かって考え続けても、なかなか良いアイデアが浮かばない。ところが、少し外を歩いてみると、ふと解決策を思いつく。

そんな経験をしたことがある方もいるのではないでしょうか。

歩行と創造性の関係は、実際に研究されています。

スタンフォード大学の研究者が2014年に発表した研究では、歩いているときの創造的な発想が、座っているときと比べて平均約60%増加したと報告されています。

この研究で評価されたのは、さまざまなアイデアを生み出す「拡散的思考」と呼ばれる能力です。

すべての知的能力が一律に高まるという意味ではありませんが、新しい発想を生み出す場面では、歩くことが役立つ可能性が示されています。

さらに、歩いた後に座って課題に取り組んだ場合にも、創造性へのプラスの影響が確認されたこと。

つまり、歩きながら考えることだけでなく、歩いてから考えることにも意味があるかもしれないのです。

本書を読んで最初に面白いと感じたのは、こうした習慣を世界的な企業の経営者たちが取り入れていることでした。

仕事の効率を考えると、会議室に座って話し合うことが合理的に思えるかもしれません。しかし、新しいアイデアを生み出すためには、身体を動かしたり、環境を変えたりすることも選択肢になりうるのです。

仕事で考えが煮詰まったとき、少し歩いてみる。

新しい企画を考えるとき、誰かと歩きながら話してみる。

そんな身近な習慣にも、科学的に研究する価値があることを改めて感じました。



■ 歩くことと前頭葉。脳機能との関係が面白い

私が本書を読んで特に興味深かったのは、歩くことと脳の働きについてです。

歩くことは、単に筋肉を動かす行為ではない。

それはどういうことなのか、

私たちが歩くときには、周囲の景色を見て、身体の傾きや動きを感じ、足裏から伝わる情報を受け取りながら、バランスを調整しています。

その際には、視覚、前庭感覚、体性感覚などの情報が利用され、小脳をはじめとするさまざまな脳領域が運動の調整に関わっています。

そして、歩くことを考えるうえで、私が重要だと感じているのが前頭葉の働きです。

前頭葉は、注意、計画、判断、行動のコントロールなどに関わっています。

ただし、歩くことによる創造性への影響を、前頭葉だけの働きで説明できるわけではありません。

脳内の複数の領域やネットワークが関わっていると考えられているからです。

ここが、機能神経学の視点から身体を考えるうえでも興味深いところです。

例えば、身体を動かす際には、感覚情報を受け取ること、それを統合すること、適切な運動を選択すること、そして実際に動作を実行することが必要になります。これは歩くことも同じです。

視覚情報がどのように利用されているのか、

前庭感覚や体性感覚が姿勢制御にどう関わるのか、

小脳が運動の調整にどのように関与するのか、

こうした働きは、互いに独立して機能しているわけではありません。

身体の動きを考えるとき、筋肉や関節だけでなく、脳が感覚情報を受け取り、身体をコントロールする仕組みにも目を向けることがとーーーても大切なのです。

私自身、日頃から身体の動きやトレーニングについて脳機能の働きを加味しながら考えていますが、本書は、こうした脳と身体の関係を改めて考えるきっかけになりました。

歩くという何気ない動作の中にも、人間の身体が持つ複雑な仕組みが詰まっているのです。



■ 歩くことの5つの健康効果

本書では、歩くことによる健康面の効果についても、研究やデータをもとに紹介されています。

取り上げられているのは、主に次の5つ。

1.血糖値や血圧の改善

身体活動は、血糖値や血圧の管理に役立ちます。

特に、長時間座り続ける生活を見直し、日常的に身体を動かすことは大切です。食後に短時間歩くことも、食後血糖値の上昇を抑える方法のひとつとして研究されています。

2.長寿との関係

日常的な身体活動量が多い人ほど、死亡リスクが低い傾向にあることが、多くの研究で報告されています。

健康のために特別な運動を始めることも大切ですが、普段の生活の中で歩く機会を増やすことにも意味があります。

3.がんや心疾患のリスクとの関係

身体活動は、心血管疾患や特定のがんのリスクとの関連が研究されています。

もちろん、歩くだけですべての病気を防げるわけではありません。しかし、継続的な身体活動は、健康維持を考えるうえで重要な要素です。

4.睡眠やストレスとの関係

適度な身体活動は、睡眠の質や心の健康を支えることにもつながります。

仕事や家事で忙しいときほど、同じ場所に座り続けてしまいがちです。そんなときに少し歩く時間をつくることは、気分転換のきっかけにもなります。

5.脳卒中のリスクとの関係

身体活動は、血圧などの心血管リスク因子の管理にも関わっています。

日頃から身体を動かす習慣を持つことは、脳卒中を含む循環器疾患の予防を考えるうえでも重要です。

これらは、書籍で紹介されている健康効果のテーマをまとめたものです。個々の研究によって対象者や条件は異なり、歩行だけで病気を予防・治療できるという意味ではありません。

それでも、歩くことが、身体の健康を支える身近な習慣であることは間違いないと思います。

私が特に良いと感じたのは、歩くことを特別なトレーニングとして考えるのではなく、普段の生活の中に取り入れられる活動として捉え直せることです。



■ 座り続ける生活を見直す

現代では、仕事中も移動中も座って過ごす時間が長くなりがちです。

便利な生活になった一方で、日常的に身体を動かす機会が減っている方も多いのではないでしょうか。

本書では、歩くことのメリットだけでなく、座る時間が長くなった現代の生活様式にも目を向けています。

ここで大切なのは、運動の時間を確保することだけを考えないこと。

例えば、

長時間座っているときは、途中で立ち上がる。
食後に無理のない範囲で散歩する。
近い距離の移動では、歩く機会をつくる。
電話や簡単な打ち合わせを、歩きながら行ってみる。
こうした小さな工夫も、日常の身体活動を増やす方法です。

もちろん、歩くことがすべての不調を解決するわけではありませんが、特別な運動を始めることだけが健康づくりではない、という視点は、多くの方にとって参考になることだと思います。



■ ベアフットシューズとアルトラ。足と靴の関係

本書でもうひとつ、私が興味深く読んだ部分が、足の構造と靴の関係についてです。

私自身、アルトラのシューズを数年前から履いてランニングをしており、

ベアフットシューズや、足指が動きやすい靴の考え方については、特に面白く感じました。


「ベアフットシューズ?」

「アルトラって何?」


そう思った人は、ぜひこの本を読んで、アルトラを履いて体現してみてください。

アルトラの特徴のひとつは、つま先部分にゆとりを持たせた「フットシェイプ」と呼ばれる形状と、かかとと前足部の高低差をなくした「ゼロドロップ」です。

一般的な靴を選ぶ際には、デザインやクッション性、履き心地などに目が向きがちです。

しかし、その場合、靴の形状や構造によって、足指の動かしやすさや、足と地面との接し方が変わる可能性があります。

足は、単に身体を支える土台ではなく、歩行時には、地面からの情報を受け取り、身体を支え、推進力を生み出す役割も担っています。

足指や足部の機能を考えることは、歩き方や身体の使い方を考えるうえでも興味深いテーマです。

本書では、靴を単なる道具としてではなく、人間の身体と歩行に影響を与えるものとして捉えており、

この視点は、私自身がアルトラを履いていることもあり、非常に共感できる部分でした。

ここで注意していただきたいのが、ゼロドロップやベアフットシューズで歩くことが、すべての人にとって最適というわけではないということ。

例えば、常にヒールを履いている方がゼロドロップシューズに変えることで足首、膝、股関節にかかる負荷が変化し、不調になることもあるからです。

そのような方は、少しずつゼロドロップシューズに慣れていくことが大切です。

特定の靴を履くこと自体を目的にするのではなく、今の自分の足がどのように働き、どのように地面と接しているのかを知ることだと思います。

靴選びを通して、自分の身体を見直す。

これも、本書から得られる大切な視点のひとつです。



■ 歩くことは、身体と環境をつなぐ行為

本書の魅力は、脳や身体だけでなく、街や自然といった環境にも目を向けていることもあります。

歩きやすい道があるか。気軽に外へ出られる環境か。自然に触れられる場所があるか。

こうした環境も、日常的に歩く機会に影響します。

健康のために歩こうと思っても、忙しさや生活環境によって、なかなか習慣にできないこともあります。

だからこそ、意志の力だけで歩く時間を増やそうとするのではなく、自然と歩きたくなる環境をつくるという考え方も重要です。

歩くことを、運動のためだけの時間に限定しない。

通勤や買い物、家族や友人との会話、自然の中で過ごす時間など、生活そのものの中に歩く機会を組み込んでいく。

こうした発想は、健康づくりを長く続けるためにも参考になると感じました。



■ 治療やトレーニングの視点から考える「歩く」

私たちが身体の不調や動きの問題を考えるとき、筋肉や関節に注目することはもちろん大切です。

しかし、身体の動きは、筋力や柔軟性だけで決まるわけではありません。

視覚から得られる情報、前庭感覚によるバランスの情報、足裏などから得られる体性感覚、そして脳による運動の調整など、多くの要素が関係しています。

歩行は、こうした要素が組み合わさって成立する動作です。

例えば、同じ距離を歩いていても、歩きやすさや疲れやすさは人によって異なりますよね。

その背景には、筋力や持久力だけでなく、足の状態、バランス、感覚情報の利用、靴、歩く環境など、さまざまな要因が関わっている可能性があります。

だからこそ、身体を部分的に捉えるだけでなく、全体のつながりから考えることが大切です。

本書を読んで、歩くことを改めて多角的に考えることができました。

同時に、日常の何気ない動作の中にも、身体を理解するためのヒントがあると感じました。



健康のために歩くことはもちろん大切です。

しかし、それだけではなく、歩くことは思考や日常生活、身体の使い方を見直すきっかけにもなります。

・特別な運動を始める前に、まずは普段の生活の中で歩く機会を見直してみる。

・考えが煮詰まったら、少し歩いてみる。

・自分の足や靴について考えてみる。

そんな小さなことの繰り返しで、身体との向き合い方が少し変わるかもしれませんね。




「歩く」という当たり前の習慣を、少し違った視点から見つめ直してみる。

健康に関心のある方はもちろん、運動指導者や治療家にとっても、専門的な知識がなくても読みやすく、歩くことを多角的に考えるきっかけになるはずです。

皆さんにも、ぜひ読んでみてください。

待合スペースにも置いてありますので、お手に取って読んでいただければと思います。


今回ご紹介した本

『歩く マジで人生が変わる習慣』

著者:池田光史


《この記事の監修者》

小井手 智啓(こいで ともひろ)

はり・きゅう・マッサージ治療院 THE DiME 院長

学生時代より鍼灸接骨院や整形外科にてスポーツ外傷の鑑別・施術を学ぶ。国家資格取得後は病院勤務を経て、トリガーポイント専門の鍼灸院にて5年間臨床経験を積む。2013年世田谷区奥沢に「はり・きゅう・マッサージ治療院 THE DiME」を開業。

2016年には朝日新聞出版より『さする&伸ばすで痛みを解消 筋膜ストレッチ』を監修。当時主流だったフォームローラーなどで患部に強い圧をかける手法とは一線を画し、優しく触れる・伸ばす(ズラす)アプローチによる独自の筋膜リリースを発信。

2023年には院内にトレーニングルームを併設し、運動療法を本格的に導入。一般の患者様からトップアスリートまで幅広く動きの改善をサポートしている。院内での施術の他、後進の育成や講師活動にも精力的に取り組む。

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